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年頭にあたって [挨拶]

年頭にあたって
今年もルーディメントを宜しくお願いします。

最近、一冊の本に出会った。
髙橋宏知「メカ屋のための脳科学入門」(日刊工業新聞社)だ。続編もつい最近出版
されたので、あわせて読んでいるところである。
一言で言うなら「久しぶりに面白い本と出会った」という感じである。
面白い本とは失礼かもしれない。「素晴らしい本と出会った」という感じである。
この本を読む前に、大いに刺激を受けた本が
エリック.R・カンデル,‎ ラリー.R・スクワイア (著)「記憶の仕組み 上・下」
(ブルーバックス)であった。この本を読んで、記憶の仕組みが少しだけわかった気が
していたが、髙橋氏の本はそれ以上に強烈だった。

何が強烈だったのか。
一つだけ例を挙げる。p.21に書かれている「脳はほとんど外界情報を必要としない」
である。氏によれば「視覚情報は網膜で神経情報に変換された後、脳幹の外側膝状体
という部位で一旦中継され、大脳皮質の一次視覚野に至る。外側膝状体に入力される
情報の内訳を調べると、実は網膜からはたったの2割しかなく、8割は一次視野覚か
らである」という。さらに読み進めると、一次視覚野の情報は高次視野角からの情報
がおよそ8割を占めているとあり、それを勘案すると一次視覚野に入る網膜からの情
報は全体の4%になってしまうということだ。氏は「・・・いかに、我々が妄想の中
で生きているかがわかるだろう」と述べている。

よく考えてみればこれはあたりまえと言えないこともない。
眼で見た外界からの情報をすべて記憶しているとすると10分も散歩すれば膨大な
情報量が脳に入るだろう。脳は多くの不要な情報を切り捨てているからこそ、注意し
たことや興味のあることを覚えていられるのかもしれない。
それにしても、4%という数字に大いに驚かされたのである。

前掲書には、この例ような驚きの情報が詰まっている。
良い本に出会えることは幸運だ。
 

 
さて、今、なぜ、私が脳科学の本に興味を持つのか。
それは、経験則でしてきた教育現場の指導に、ゆるがない根拠がほしいからだ。
時として経験則に誤りを見出すことがある。
例えば、基礎・基本をしっかり学べば応用力もつくという巷間よくいわれる
こと(経験則??)だ。
何が基礎・基本で何が応用力なのかということを定義しないとそもそも議論にも
ならないのだろうが、このようなことはよく言われることだ。
実際には、いわゆる「学習の転移」の研究は今も発展途上のようだ。
このこと一つをとっても、現場ではどのような条件が整ったときに、どのような
学習の転移が起こるのかを注意深く見極める必要があるだろう。
例えば、算数で例題を解くだけでは、次につづく類題や練習問題は必ずしも解け
るようにはならないのである。
一般に、学習塾では、さまざまなタイプの問題を解かせていることは周知の事実だ。
だいたい、教科書は例題、類題、練習問題という基本構成になっているのに、例題のみ
を解かせればあとは何とかなるというのは明らかに誤りである。
しかし、現場では例題にこだわるあまり、類題、練習問題を解くことが疎かになる
指導を何度もみた。類題、練習問題を解くことも含めて基礎・基本と捉える必要が
あるのだろう。
経験則だけでは、どうにもならないことが教育現場には数多くあるように私は感じる。
だから、実践の根拠となることを見極めたいと思う。

少し、話が逸れてしまったが、今年は脳の仕組みを自分なりに学び直して、脳科学や
認知心理学の成果に少なくとも反しない実践を構築したいと年頭にあたり考えた。
実は以前から考えていたことではあるが、良書と出会って益々そう感じたのである。
最後に、新しいカタチを追究した本をもう一冊ご紹介したい。
佐々木拓哉「脳と情報-神経回路と記憶のメカニズム(アイカードブック)」である。
電子書籍のあたらしいカタチを模索しているところが興味深い。

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